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Roger Sheringham and The Vane Mystery
-チャールズ・ファラー夫妻に-
舞 台-ハンプシャー ラドマス村 5月頃
(ウィッチフォードの9ヵ月後)
探 偵-ロジャー・シェリンガム(36歳)/モーズビー警部
間抜けな助手-アントニイ・ウォルトン(従弟)
発 表-1927年 79年前
アントニイ・バークリー-34歳

<あらすじ>
従弟アントニイの誘いで旅行へ出かけようとしていたロジャーに、クーリア紙編集長から電話がかかる。ラドマス湾で起きた転落事故現場に、ヤードの腕利き警部モーズビーが派遣されたとの情報を受け、殺人事件の可能性を感じた編集長は、ウィッチフォードでの功績を買ってロジャーに特派員として現地に赴くことを依頼。
旅行先を、あっさりハンプシャーに変える2人。
モーズビー警部が泊まる宿屋の部屋を全部借り切って、他社の記者を牽制し、警部と情報合戦・推理合戦を繰り広げるロジャー。
一方アントニイは、被害者の従妹で第一容疑者の美人マーガレットに急接近。┐( ̄ー ̄)┌
二転三転の推理の末、警部とロジャーが逮捕に向かうと、そこには容疑者の死体が・・・
☆☆☆
「ほら、ぼくには間抜けな助手が欠かせないじゃないか。名探偵っていうのはそういうもんだから。」P-20
という理由で同行させられたアントニイは、期待をを遥かに上回る間抜けぶり。
上の台詞はジョークでも何でもなく、一点の曇りもなく心の底からそう思っているんだろうなロジャー。
また、モーズビー警部の 表面は穏やかながら、決して警官としての職務を忘れない毅然としたロジャーの”扱いっぷり”はお見事。
ロジャーをじらして、ブラックハウンドの鳴き真似をさせたり、
「私たちの仕事は、空想ではなく事実を扱うことなのです。」P-151という単刀直入なイヤミ(事実)の数々が、胸をスカッとさせてくれる。
ので、小説としてとても面白い。
が、推理小説としてはどうなのかなぁ~と思った。
理由は、「正解が出ていない」からである。推理小説の定義はよく分からないが、自分的には 必ず最後に犯人が明確になって答え合わせのようなものがある-ように思っていたので。
警部によって、犯人だろうという人は指摘されるが証拠不十分で逮捕されないのだ。バークリーは、
・探偵(特にロジャー)の直感・人を見る目はあてにならない。
・探偵(同 上)がいなくても、警察が十分事件を解決する。
に加えて、現実同様
・事件の全容が必ず明らかになるわけではない。
・犯人が必ず罰せられるわけではない。
ってトコまで、探偵小説の定石を皮肉っているみたい。
2件目の殺人事件を読んだ時、「翌朝逮捕に行くことを知っていたのは誰か?」消去法で、犯人はあの人しかいないと思ったのだが、すぐにロジャーが大変意外な犯人を理詰めで指摘する。
「ほほー」と思っていると、更にそれを警部がどんでん返して、結局犯人は…。
まー、あの人が犯人でいいんだろうけど、ハッキリとさせた書き方じゃない。
直前に読んだ「ハムレット復讐せよ」と、流れがとても似ている。
アマチュア探偵がいかにもな推理を披露した後、本職警官が真相を究明するという。
ただし、ハムの方は、犯人は疑問の余地はないし、ある意味罰せられる。そう、バークリーはわざと"疑問の余地"を残しているんだろうね。
こんな風に、少しもやもやした気分で読み終ろうとしているワタクシに、警部の最後の言葉が。
『「問題はどこにあるのか、おわかりになりますか?」と親切につけ加えた。「探偵小説を読みすぎるんですよ。」』P-305
ホント、人をくったオッサンだよっ!
↑バークリー
「ハムレット復讐せよ」のすぐ後に読んだので、読み易かった~。だって、登場人物全部で11人だよ!探偵側も入れて。(ハムは容疑者だけで31人…)登場人物は1/3なのにページ数に大差ないということは、ほとんどが"ロジャーのしゃべり"ってことか。
ロジャー・シェリンガム三作目にして、やっとワタクシにも"バークリーがロジャーにさせたいこと"が体に馴染んできたよ。
ウォルトン君が、50回目の天啓を受けるまでには結婚されていることを祈念し、感想を終わります。
☆☆☆
後で、「どんな人だっけ?」となる自分のための備忘録。
<モーズビー警部>
-ヤードの大物。重大な殺人事件にほとんど関与-
「人が名探偵と聞いて想像するイメージとはかけ離れていた。その顔は剃刀どころか、手斧とも似ても似つかない(あえてそうしたものに喩えるとするならば、バターナイフといったところだろう)。その眼差しは幼少の頃から鋭くて有名だったということもなければ、人に厳しい意見をたたきつけることもない-ただ普通に話すだけだった。遠まわしな説明はやめてはっきり言おう。警部は何の特徴もないごく普通の外見で、ごくごく普通に振る舞う男だった。
さらに細かなことを説明すれば、がっちりとした体つきで、両端が垂れ下がった濃い白髪混じりの口ひげをたくわえ、ずんぐりとした不器用そうな指をしていた。その顔には常に邪気のない温和な表情を浮かべていて、陽気で朗らかな性格で知られていた。そしてどんな相手にだろうと、決して敵意を抱くということはなかった。」P-36~37
<アントニイ・ウォルトン>
-ロジャーの従弟 25歳-
「オックスフォードでの学生時代はラグビーの対抗戦選手としてならしたアントニイは、肩幅が広いがっちりとした体格で、人柄は抜群だが頭の回転という点では難があった。今では、平日は一応父親の会社に通っているが、ただ座っているだけで仕事らしきことはせず、毎週末の土曜日にハーレクィンズというチームの選手としてラグビーの試合に出ることだけを楽しみにしていた。」P-19
☆☆☆
米題:The Mystery at Lover's Cave ; Vane Mystery
晶文社ミステリ 2003年4月20日初版
訳:武藤崇恵