毒入りチョコレート事件-創元推理文庫
-S・H・J・コックスへ こんどばかりは彼も当たらなかったので-(←ロジャーのこと?)
舞 台-ロンドン 11月15日(金)~(ヴェインの18ヵ月後)
探 偵-「犯罪研究会」の6名
**************チャールズ・ワイルドマン卿
**************フィールダー・フレミング
**************モートン・ハロゲイト・ブラッドレー
**************ロジャー・シェリンガム(会長)
**************アリシア・ダマーズ
**************アンブローズ・チタウィック
発 表-1929年 77年前
アントニイ・バークリー-36歳

写真の商品と本文は関係ありません。
<あらすじ>
ロジャー・シェリンガムは5ヶ月前に同好の志を集めて「犯罪研究会」を結成、その会の『犯罪学演習』として、スコットランド・ヤードが事実上投げ出した「毒入りチョコレート事件」に取り組むことにした。
「毒入りチョコレート事件」とは、
ユーステス・ペンファーザー卿宛に届いた試供品のチョコレートを たまたま居合わせたペンディックス氏が貰って帰ったところ、チョコレートを食べたペンディックス夫人が亡くなったというものだった。
ヤードのモレスビー警部を会に招いて調査状況を聞いた後、各自で1週間の調査、そして一日一人ずつ自説を披露していく・・・
☆☆☆
1冊の小説で6人の探偵の6通りの解答編が読めるというお得?な推理小説。
事件は、これに先立つ短編「偶然の審判」と全く同じ。
偶然の審判で鮮やかな推理を披露したロジャーの発表は4番目(↑上の順番)。ロジャーの後に2人の発表者がいるわけで、「どうなるんだろー?ロジャーの推理は偶然の審判と違うのかな?」と読み進むが---
ロジャーの推理は前作と全く同じであったが、決め手となっていた"賭け"の件も目撃証言も、次のダマーズ女史にあっさり覆される。
実に、アッサリと・・・
で、最終的に 前作とは違う犯人。
6人が6人とも"それらしい"説を披露する。
「偶然の審判」であんなに鮮やかに締めくくったのに、どうしてまたコレを書いたのか疑問に思う。
バークリーの"ひねくれ方"を考えると、「偶然の審判」が推理小説として好評(だったに違いない!)だったことに対して、
探偵(ロジャー)の推理も完璧ではなく
他にいくらだって推論は立つんだ
ということを、作者だからこそやってみせたのかな~。
推理作家のブラッドレーに
「お話したことは全部事実です。しかし、真相の全部をお話してはいません。技巧的な論証は、ほかの技巧的なものがすべてそうであるように、ただ選択の問題です。何を話し、何を言い残すかを心得ていさえすれば、どんなことでも好きなように、しかも充分に説得力をもって、論証することができるものですよ。ぼくは自分の書くどの作品の中でも、それをやっていますが、いまだかつて、書評家がぼくのずさんな論理に文句をつけたためしはないですね。」P-175 と言わせている。
いろいろなパターンが出来るという試みをしたことは、推理小説史的に意義のあったことなのだろうが、6パターンの中で推理小説として一番良く出来てるのは やっぱりロジャーの説だと私は思うな。
今回の真犯人の方法では、不確実性が高過ぎる。チョコレートの到達ルートも、毒の注入量も。(この確実性について、ロジャーの説に勝るものはない)
犯人が間抜けじゃないだけに、信憑性に欠ける。
背景となった三角関係も納得しがたい。キャラタイプからいうと、ラクロの「危険な関係」みたいだが、本書のメルトイユ侯爵夫人は本書のバルモン子爵に本気になるかな?バルモン子爵は本書のトゥールベル夫人に本気になるかな???
ロジャー、今回は大変だったね。
犯罪研究会の会長として、事件よりも会の人間関係の心労が多く(泣)、ダマーズ女史には徹底的に叩きのめされるしね・・・
得意のおしゃべりもほとんど出来なかったし。
フォーエックスを1ガロンでも2ガロンでも飲んでくれっ
☆☆☆
東京創元社 2004年3月12日 28版
訳:高橋泰邦