殺意-創元推理文庫
舞 台-デボンシャー ワイヴァーンズ・クロス
1929~30年
犯 人-エドマンド・ビクリー博士(37歳)
発 表-1931年 75年前
フランシス・アイルズ-38歳

<あらすじ>
ビクリー博士は、小さな田舎町ワイヴァーンズ・クロスの開業医。妻ジュリアは家柄も身長も夫より高く、ビクリー博士を足拭きマットのように扱っていた。
妻の目を盗んで村の娘たちと情事を楽しんでいたが、最近『屋敷』へ越してきたマドレイン・クランミアに本気になり、ジュリアに離婚を切り出す。離婚を拒絶された博士は、妻の殺害計画を立て始め・・・
☆☆☆
原題「Malice Aforethought」は、法律用語らしい。Yahoo辞書で見ると「予謀の害意」。見たことのない単語だったので調べてみたのだが、日常会話で使われる?”殺意”的単語とは区別して、作者はわざわざ法律用語を使ったものと思われる。
というのは、終盤は ある容疑で逮捕されたビクリー博士の裁判の様子が描かれ、裁判の判決をもって物語の幕を閉じる。
この章の表題「細菌劇」が象徴しているのだが、裁判が避けて通れない非常に皮肉な結末なので、法廷で使われている単語を本の題名にしたのだろう。
ただ、日本で売るには「殺意」の方が売れると思うけどね。
一応 原題を調べてみてよかった。
ビクリー博士は「なんともはや・・・┐( ̄ー ̄)┌ 」なオッサン。
家柄と身長と恐妻へのコンプレックスから、女遊びと妄想に逃避していたのだが、職業柄 人命を自由にできる知識と技術があることに気づき 自分には他人の生殺与奪の権利があるかのごときスーパーマンへ(本人の意識上)変貌を遂げていく。
最初は、寝る前の些細な妄想からなのだ。誰でも思いそうな「自分がイチローだったら」とか「宝くじが当たったら」とか。
それがあそこまで行っちゃうのは、コンプレックスと専門知識があったればこそだな。あ、あと身勝手な人格か。
作者が同年に「最上階の殺人」と「殺意」という、全く雰囲気の異なる作品を発表しているのは驚きなのだが、
一条ゆかりさんが愉快な「有閑倶楽部」ととんでもなく暗い「砂の城」を書く、魔夜峰央さんが怪奇漫画と「パタリロ」を書く、楳図かずおさんが「おろち」と「まことちゃん」を書く-んですものね。
モチロン、「最上階の殺人」が「まことちゃん」で、「殺意」が「おろち」です。
エピローグがあっけなさ過ぎるように感じるが、非常に効果的。
まさしく、「ええっ!」って感じ。
☆☆☆
Francis Iles
東京創元社 2002年1月18日 17版
訳:大久保 康雄
<ネタばれ・・・かな?>
バークリーのメイン探偵ロジャー・シェリンガムは、よく犯人を間違える。
ってことは、『間違えられる人がいる』ってことだ。
ゆえに、バークリー=フランシス・アイルズだね♪